The Usual Disclaimers Apply

CGEモデル分析、ときどきDIY&フライトログ(しばしば比率逆転)

DP: 英国欧州連合離脱 : 企業退出と財の多様性喪失



夏の自由研究


BrexitのCGE分析はいろいろあるけれども、Melitzでやっているのはなかったのでやってみた。




モデル



  • Melitz(2003)型CGEモデルを適用。

  • 3ヵ国(UK, EU27, ROW)

  • 10部門(うち6部門はMelitz型の規模の経済・企業の多様性あり)

  • Melitz型以外に、規模の経済のないArmington型も用いて比較。






ふつうのMelitz型(CGEに限らない)モデルでは、バラエティも国籍も一緒に1段階のネストだが、ここでは、国籍のネスト(Armington構造)とバラエティのネスト(Dixit-Stiglitz)の2つに分離











シミュレーション・シナリオ



  1. UK-EU27間でMFN関税賦課

  2. UK-EU27間で輸送費増加 +1.

  3. UK-EU27間で輸出固定費増加 +1.




EU財政拠出金は最後に比較するときに考慮する。(モデル内で国際間の所得移転は考えない。)




結果



貿易


  • UK-EU27間の貿易は大きく落ち込む(輸出バラエティ・企業数が最悪の場合は半減)

  • 輸入関税はそこそこ効く

  • 輸送費の増加は大したことない

  • 輸出固定費の増加はかなり効く


生産


  • UKの農業、食品・飲料の国内生産が拡大

  • UKの繊維・衣料、鉄鋼・金属、自動車・輸送機械の国内生産が大きく落ち込む




厚生


  • ArmingtonでやったらUKは厚生効果が正値、または、わずかな負値

  • Melitzでやったら常に負値。とくに、シナリオ3で大きな損失

  • EU財政拠出金(UK GDPの0.5%)の節約分を吹き飛ばす可能性がある

  • EU27側は、経済規模の違いを考えると深刻さは小さい

  • ROWは漁夫の利

















参考文献








その他



Brexitは無冠詞


最初に英語版を書いて、それを翻訳したらえらい硬い日本語になって、それを元に英語を直して、以下繰り返し、をしていたら混乱してきた。なんとか発散させずに収束させ、英文校正(550AUDぐらい...AUDも安くなったものだ)。


DPに出した後に誤植を数回修正してもらったりしたので、事務局には大変申し訳ありませんでした(平謝り)。