The Usual Disclaimers Apply

CGEモデル分析、ときどきDIY&フライトログ(しばしば比率逆転)

終身雇用(制度)なんて最初からありません

解雇・リストラのイラスト終身雇用なんて最初からありません。2,3の歴史上の出来事を知っていて、算数ができればわかる話



以下、可能な限り緩い条件で、終身雇用制度が成立する(していた可能性がある)条件を考える。



終身雇用ということは、(自発的に離職しない限り)いったん就職したら、全員が退職までその会社で勤める、ということ(当たり前)。ただし、事前に(明示的に?暗黙に?)その約束・契約になっているかどうか、事後的に(=結果的に)そうなってしまった(実現したように見える)かどうかで多少の認識上の違いがある。



(なお、終身雇用制度が「適用」されていたのは、大卒・男性・ホワイトカラー・大企業のみ、というのが通り相場であるが、ここではその縛りは掛けないで議論をしておく。)



前者の契約が成立していると考えるのは条件が厳しすぎるので、後者が成立していたかどうかも考えてみる。少なくとも、後者が成立していなければ、前者が成立しているはずもない、あるいは、事前の契約が破棄されたというきわめて不都合な状況。



さて、15歳で金の卵が就職して、当時の標準的な定年が55歳だとするなら、勤続年数は最長で40年間大卒なら22歳から始まるので、勤続年数は33年と短くなる。あるいは、定年が60歳のところもあったかもしれない。その場合には、それぞれ最長勤続年数は45年、38年になる。



彼らがいつ頃就職したのであろうか。実際のところがわからないので、簡単に考えよう。太平洋戦争期間中に終身雇用制度があったと考えるのは、まあ、無理なので、少なくともそのような制度が成立したのは戦後であろう。戦後の混乱が、朝鮮戦争特需期ぐらいで収拾して、直ちに終身雇用制度が成立・運用を開始したとしよう(これも無理のある仮定であることは百も承知)。



1950年に就職した中卒・大卒の人が定年を迎えるのはいつだろうか。55歳定年を考え、40ないし33年後なら、それぞれ、1990年、ないし、1983年ということになる。60歳定年なら、1995年と1988年に退職する。



円高ドル安のイラスト一方、彼らが働き続けていた間にどんな歴史的な出来事があったであろうか。結論から言えば、1985年のプラザ合意後、いわゆる円高不況期に突入して、リストラ、窓際族が発生して、(そもそも契約上存在していなかっただけでなく)事実上も、終身雇用制度はなくなったと考えるのがふつうではないか。もちろん、リストラ対象は全員ではないだろうけれども、「全員を定年まで雇用する」という前提が成り立たないことが判明した時点で、「暗黙の契約」など誰も信じることはできないだろう。



算数の結果、うまく事実上の終身雇用制度を利用できたのは、せいぜい1950年以降の数年間に就職した大卒の人たちだけ、ということになる。結果的に数バッチの人たちだけが享受できたものを、「制度」とまで呼べるのか?



ターニングポイントを、プラザ合意ではなく1990年のバブル崩壊に取ることもできる。そうすると、あと5バッチぐらいの人が結果的終身雇用を享受したことになるが、それぐらいの「期間延長」で制度と呼ぶ?