The Usual Disclaimers Apply

CGEモデル分析、ときどきDIY&フライトログ(しばしば比率逆転)

小長谷・前川(編) (2012) 『経済効果入門: 地域活性化・企画立案・政策評価のツール』,日本評論社.

産業連関表/分析の本です。タイトルと目次だけ見ると、エクセル等でレオンティエフの逆行列を計算して、なにかの政策の影響を初心者でもできるようなテクニックで出す方法を教えてくれるという入門本に見えます。実際、第3部の目次は、


第9章 市立中学校跡地の活用による経済効果の測定

第10章 都市開発における多機能型複合施設の経済効果の分析

第11章 「KOBE鉄人PROJECT」の経済波及効果

第12章 電気自動車の生産がもたらす地域経済への波及効果分析

第13章 マラソン・イベントの経済波及効果

第14章 コンテンツの経済波及効果の分析

第15章 非市場財の経済効果をどう測るか

第16章 伝建地区や大正ロマンのまちづくり




ISBN: 9784535556607

と、いろいろ楽しそうです。



しかし実際は、さにあらず。中身は、初心者が手を出すには、少し硬派です。



第1部の理論部分は標準的なもので、とくに難しいまでは立ち入っていません。それだけに、最小限のエッセンスがよくわかるのでとても便利だと思います。



第2部の実際の政策分析のためのデータの前処理については、私個人としても大変勉強になります。観光客が増えるというシミュレーションだからといって、「お土産代」をそのまま食料品などの最終需要がそのまま増えるとか、「外食」が増えたからレストランの最終需要がそのまま増える、なんて仮定してはいけないということが勉強になります。ちゃんとマージン表を使って、それぞれの経済活動の中身を各財・サービスの最終需要に分解しなければいけません。



その意味で、私の先年のDPは悪い例ですね。(まあ、あれは、震災直後のあの自粛ムードに逆らいたかったから書いた、というエチュードということでご容赦。)



産業連関表の付表を使ったデータの前処理が大事ということを学んだ一方で、さて、これを私のような素人ができるかというと...、産業連関表の奥が深すぎるようで、かなりの勇気が必要のようです。



元に戻って、産業連関分析で一体どういうことができるのかということを知りたい人には、第3部をパラパラめくってみるといいかもしれません。ただし、狭い紙幅にすべてを押し込めていること、また、産業連関以外の手法(たとえばヘドニック)も用いているもののその説明がないことから、初心者には、実は、一番難しいところかも知れません。内容は興味深く、さらに(大阪市大の先生を中心に書いているので)関西の話が多く個人的には親近感がわきます。



一つ重大な問題は、索引がないことでしょうか。これは大変残念です。産業連関モデルを分析ツールとしているので、タイトルは『産業連関表による経済効果分析入門』とした方がよかったかと。



エクセルの技術としては、資料編P.318が参考になりました。データツールの統合を使って産業連関表を集計できるんですね(イママデ、シランカッタンカイ...orz)。



参考文献