The Usual Disclaimers Apply

CGEモデル分析、ときどきDIY&フライトログ(しばしば比率逆転)

GTAP2016@WB/DC(2): 世界貿易CGEモデルの基準財選択の問題





Q. 基準財の取り方は本来自由なはずだが、世界貿易CGEモデルではうまくいかない(結果が異なる)


1国モデル(一般的には「中身を描写しないROW」を含む多国・他地域モデルでも)では、シミュレーション結果は基準財の選択に依存しない。たとえば、細江ほか(2016, 第6章)の現実的な応用一般均衡モデル(stdcge.gms)において、


pf.fx("LAB")=1;

としても、


pf.fx("CAP")=1;

としても(また、それら以外でも)、解(数量と相対価格)は同じ。




しかし、n国世界貿易モデルではそうは問屋が卸さない




理由は?



  1. 1国モデルと同様に、n-1国について外貨建て経常収支を固定することはできる。

  2. ここで「外貨」とは、最後に残った第n国の通貨のこと。

  3. しかし、最後の1国については、自国建て経常収支を固定することしかできない。

  4. この場合、(少なくとも)第n国にとっては、基準財の選択次第で、外国から流入する資金(経常収支赤字)の自国通貨建てでの価値が違ったものになってしまう。

  5. n国が受けるこの影響は、当然、他のn-1国に対して何らかの影響を与えてしまうことになる。


ということ。翻って、1国モデルでこの問題が発生しないのは、「外国」の中身を描写しないのでその基準財を考える必要がなくなり、)4点目の問題が発生しないから。



 なお、ちょっと考えればわかるように、経常収支が均衡していればこの問題は発生しない(が、そんな状況は、現実にはまずあり得ない)。




ディスカッション


聴衆 「それで、どうせいちゅうねん!」

報告者 「俺は知らん。リタイヤした。君らの仕事や。」

全員 「(笑)」




参考文献